翼の折れた鳥たちは

「しばらくしたら、車いすからの乗り移りも練習始めましょうね」

榎田さんがベッドへ移ることを介助し終えて、話しかけると榎田さんは頷いた。

「移乗、ですね」


「えっ、えぇ。そうです」

分かりやすく伝えたら、『移乗』と専門用語で返答されてちょっとたじろいだ。

あぁ、そうか。
榎田さん、理学療法士になるための専門学校の学生だったんだっけ。


「簡単な用語なら分かります」

榎田さんが穏やかな口調で喋る。

リハビリ室じゃない、榎田さんの病室でのリハビリ。

それが気分転換になっているのか、それともここが簡単なカーテンで仕切られているとはいえ、榎田さんのホームだからか彼の表情はとても柔らかく、明るい。