翼の折れた鳥たちは

「昨日、『歩き続ければきっと光が見える』って声が空から降ってきた」


確かに榎田さんはそう言った。

やっぱり榎田さん、心が崩壊しているみたいだ。
あとでカウンセラーの先生には報告しておこう。


だけど、その声のおかげで一晩で榎田さんの声が出るようになったんだもん。

理由はどうあれ、嬉しい変化に違いはない。

「そうなんですね。よかったですね。でもそんな声が降ってくることってあるんですね」

また曖昧な笑顔を浮かべていたに違いない。

榎田さんは私の言葉に頷くだけで、それ以上言葉を発することはなかった。



だけど明らかに榎田さんは、その日を境に変わり始めたのだった。