翼の折れた鳥たちは


榎田さんの笑顔が、一気にこみ上げてきた涙のせいでぼやけて見える。

「榎田さん、おはようございます」

涙が零れないようにグッと堪えて、無理矢理に笑顔を作ってもう一度挨拶を交わす。

榎田さんの声、もう一回聞きたい。


「おはよう」

確かに返ってきた声に、一気に私の心が躍りだす。


「榎田さんの声聞けたから、今日は一日なんだか頑張れそうです。私、朝礼に行ってきますね。また、後でリハビリで」

榎田さんが担当の患者だということも忘れて、彼に思い切り手を振る。
すると、榎田さんは表情をわずかに崩す。

そして、小さく私に手を振ったのだった。