あぁぁ、あ―――、あっ、あぁ!!
わずかに息切れを覚えながら、病棟に駆け上がる。
ナースステーションに続いている階段の扉を開けると、男性独特のバリトンボイスが聞こえてくる。
高い声、低い声、短くしたり、長くしたり、同じ音を様々に変化させながら何度も繰り返している。
声は301号室から聞こえてくる。
きっと、声を確認しているんだ。
『敦也くんがね、おはようって喋ったの』
耳打ちした看護師長が教えてくれた。
もちろん、301号室から聞こえてくるこの声の主は、榎田さんだ。
心の奥が震える。胸が熱くなるってきっとこんなことなんだ。

