「初めてだな、星原さんが泣くなんて」
へっ?
アドバイスとか有難いお言葉とか、泣いたことを咎められるとか思っていたのに、まさかの部長の言葉に、思わず涙が止まった。
「いや、星原さんって淡泊だと思ってたんだ。入職してから担当した患者のことで悩んだりしている様子を少なくとも僕は見たことがなかったから」
部長の話に、以前部長から言われたことをふと思い出す。
『正直に言うと、星原さんがこの病院に入職してから、少なくとも僕は一度も理学療法士としての貪欲さを君から感じたことはない』
あの言葉、きっとこういうことなんだな。
胸が苦しい。
だって、本当に初めてなんだ。
私、今初めて理学療法士になって、心の底から担当の患者さんをどうにかしたいって思っている。

