「普通車いすに移行するまではどうにか出来ました。だけど、気が付いたんです。普通車いすに乗れたら、榎田さんは若いからその後は自分で動きながら自由に病棟を移動するようになるんじゃないかって。だけど、そんな甘い考えが間違いだったと思います」

そこまで言って、ポロポロと頬を熱いものが伝ってくる。

ただ、ただ悔しかった。


自分の理学療法士としてのスキルの低さや力のなさを思い知らされた。


「榎田さんは、生きる目標みたいなものを失っています。車いすでどこかに自分から移動したい、何かをしたいっていう『want』の気持ちが皆無っていうか……」

もう涙が止まらない