翼の折れた鳥たちは

テラスの隅にある木製の丸テーブルに年季の入った将棋盤。

太田さんを待つように車いすにウッドチェアに座っているのは俺と同じ301号室の太田さんの向かい、つまり俺の斜め向かいのベッドの一ノ瀬さんだ。


俺と目があうと、一ノ瀬さんは小さく会釈をする。


細身の体格で、右半身にマヒがある一ノ瀬さんは言葉がうまく出てこないらしい。

無精ひげを生やしていて、いつもヨレヨレのTシャツに年代物のスウェットを履いている。


「あいつ、一ノ瀬さん。知っているだろ?」

俺は首を縦に振る。

「あいつ、元ホームレスだってさ。ホームレス仲間と飲み会中に脳梗塞を起こしたらしい。
きっと仲間がどうすることも出来ずに困ったんだろうな。永島病院の前に、捨てられていたらしいぞ。あの日は、一日中病院が大騒ぎだった」


太田さん、なかなかの情報通だ。