翼の折れた鳥たちは

「看護師長に連れ出されたか?看護師長は、厳しいからな。俺も3か月前榎田くんのようにしてテラスに置き去りにされた」

「はぁ」

太田さんは面白いものでも見る様に俺を眺めながら、喋る。

「俺たち、毎日朝と夕方にこのテラスで自主訓練してるんだ。車いす漕いだりしてさ。カウンターの前は、ほら、ばあさんたちが物珍しそうに話しかけてくるだろ?」

俺は小さく頷く。

「俺、ああいうばあさんたちの相手するの苦手なんだよな」

困ったように笑って、そんなことを言いながら太田さんは車いすを漕ぎながら、俺の前を横切った。

「俺たち、あっちで今、将棋してるんだ。榎田くんも見に来いよ」

太田さんが指を指した方向をチラリと見る。