翼の折れた鳥たちは

はぁぁぁぁ。

悪魔だ。

星原さんより、看護師長の方が悪魔なのかもしれない。

白衣の天使なんて、この世にはきっといない。

皆、白衣を脱いでしまえば悪魔だ。


平坦だった感情が昨日から少しずつ波打ち始めている。

俺はもう一度、大きなため息をついた。


その時だった。

「おいっ!!」

背後から低い声で呼ばれた。

驚いて、一瞬身を固くする。後ろを振り返る身体能力が俺にはないから、そうすることしか出来ない。


多分、動物界では最弱になってしまった。

そんな気分。


「おいっ!!榎田くんだろ?」

「はっ、はい」

後ろから今度は俺の前に廻り込んで、もう一度声をかけられて俺は小さくなった。