「星原さんって、意外と厳しいこと平気で言うわよね」

俺に声をかけてきたのは、きっと今の会話をすべて聞いていたであろう看護師長だ。

哀れな瞳を向けて俺を見て、苦笑いしている。


あぁ、今日も俺の隣は昨日のおばあちゃんだ。
きっと、今日も何かと話しかけられるんだろうな。

昨日のように坊ちゃん、なんて言われて。


「ここに居ても退屈でしょ?」

物思いにふけっていた俺に、看護師長が何かを思いついたような表情を浮かべて話しかける。

「外、行かない?って言ってもすぐそこのテラスなんだけど。今の時間なら同じ病室の一ノ瀬さんと太田さんも居ると思うわ」

きっと、看護師長だって星原さんに負けない位に鬼だ。

俺の意見なんて聞く素振りは見せずに、俺の車いすを押してテラスへと案内した。