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「榎田さん、夕食までここで起きておいてくださいね」


こっ、こいつ……。

昨日、ようやく普通車いすに変更されたかと思ったら、今日もナースステーション前のカウンターに車いすを停められた。


俺が恨めし気に視線を送ると絶対に気が付いているはずなのに、知らんふりしてにっこりと微笑む。

天使のような笑顔ってきっとこういう子の笑顔を言うのだろう。


「リハビリ、お疲れさまでした。では、失礼します」


星原 葵……、黙って笑っていれば可愛いのに。

あいつはやっぱり、悪魔だ。

夕食まで車いすに座って起きていろだなんて、あと1時間近くもあるじゃないか。


俺は思わず、小さなため息を吐きだした。