私はふと思い出して、押入れを開ける。

この一年の間に、随分と奥に入り込んでしまった、学生の頃の教科書を開く。

『脊髄損傷とは』

1冊の分厚い専門書を引っ張り出して、そのページを開く。


基本的治療プログラムや効果、それから行ってはいけない禁忌のことをまとめていく。

「あっ、それから、これも……」

授業でしか学んだことない精神疾患の教科書。

この授業、よく居眠りしてたな……。

そんなことを懐かしく思い返しながら、『障害受容』の単元を開き、読みふけっていった。

気が付けば、もう時間は深夜を過ぎて明け方近くになっていた。

誰かの、自分の担当する患者のために教科書を開くということは卒業してから、初めてだった。



自分の中で何かが変わろうとしていることに、私はまだ気が付いていなかった。