「葵ちゃん、番号交換する?」
敦也くんは私に試すような眼差しを向けて、携帯電話を差し出す。
一瞬、悩んだ。
敦也くんの今後を知りたい。
胸の中でそんな思いがよぎる。
「……ううん。辞めておくよ。病院で禁止されているから」
病院で禁止されてるっていうのは本当。
だけどそれより、私とこれからも繋がっていくことは敦也くんの将来に正しいかなんて分からなかったからだ。
私が敦也くんの背中を押せるのは、ここまで。
これからは敦也くんの力で、敦也くんの家族や友達、周囲の人に支えられて生きていくんだ。
「なぁんて。それくらい分かってるよ。葵ちゃん、本気にしないでよ~」
大きく肩を竦めながら、敦也くんは大きく笑って見せた。

