「ダメかな?」
敦也くんが念を押すように聞いてくる。
「……分かった」
『葵ちゃんの歌だから聞きたい』
敦也くんの言葉が私の背中を押してくれる。
私の歌を待ってくれている敦也くんのために曲を書きたい。
少しでも敦也くんの退院後の光になれるのなら……。
私にとって最後の曲は……。
「敦也くん、今度のオーディションの曲は敦也くんのために書くよ」
今、私物凄いこと言っちゃったかもしれない。
言葉にしたらすごく恥ずかしくって、くすぐったい。
目の前の敦也くんが、目を真ん丸にして固まってしまったから、余計に恥ずかしくなって私はふいに外した。
「退院の日まで、待っててね」
夕焼けが差し迫るテラスで、私と敦也くんは小さな子供みたいに指切りをした。

