翼の折れた鳥たちは

「オーディションも今度受けるものが最後だって決めてるの」

「なんで?」

「オーディションに受かると毎回ウキウキしてた。だけど、それじゃだめだと思ったの。オーディションに出る時間を、今度からは理学療法士として研修会に出席しようって決めたの」


「最後のオーディション、いつ?」

敦也くんが前のめりになって尋ねる。

「再来週の日曜日。敦也くんが退院した2日後だね」

「そっか」

敦也くんは、そう言いながら何か考えている様子だ。

「今度のオーディションはね、シンガーソングライター発掘オーディション。作詞作曲も歌も全部自分で行うの。私の今の想いを歌にしようと思って、今、毎晩頑張ってる」

これが、なかなかうまくいかなくて悪戦苦闘しているんだけど。

私は難しい顔をした敦也くんを和ませたくて、にっこりと微笑みかける。