敦也くんは静かに聞いていた。
そして目の前で頭を下げた私に、柔らかな声色で声をかける。
「頭、あげてよ。葵ちゃん」
敦也くんの声にゆっくりと頭を上げる。
「そんなこと、なんとなく気が付いていたよ。それにあの時、『2年目だから』って曖昧な返事をしたのは、葵ちゃんなりの優しさなんだってずっと思ってた」
「えっ?」
キョトンとした私に、敦也くんは視線を彷徨わせながら、言葉を選ぶように話を続ける。
「怪我のせいで理学療法士になれなくなって精神状態どん底の俺に『理学療法士になって良かった』って答えられても、『後悔してる』って言われても俺はそれなりに傷ついていたと思う。あの時葵ちゃんが曖昧に答えてくれたから、俺は傷つかなかったんだよ」

