「じゃあ、また現地でね。葵ちゃん」
敦也くんの車いすを押しながらエレベーターへの向かう彼らを見送っていたら、チカラくんが私にアイコンタクトを送り、耳元でこっそりと囁く。
私は誰にも気が付かれないように小さく首を縦に動かした。
実はあの日、屋上でチカラくんはもう1つ私に提案してきたのだ。
チカラくんが敦也くんを車いすバスケ見学に付き添うことになったら、私も仕事を終えて現地で合流しようと。
もし見つかったら……。
そんな気持ちよりも、敦也くんが車いすバスケ見学している姿を、見学の時間を共有したいって気持ちが強くって、私は後先なんて考えずにチカラくんのその提案を即答で受け入れていた。

