『星原さんの気持ちはよくわかるわ。出来るだけ私たちも頑張ってみるけれど、難しいこともあるかもしれないわ。それじゃあ、お疲れ様』


「ちょっ、ちょっと待ってください!!前田さん」

受話器を置こうとしていただろう前田さんの動きを制するように、電話越しに大きな声をあげていた。

「一晩だけ、待ってくれませんか?私、同行できるように調整してみます」


思わず、口走っていた。

調整なんて出来るわけない。

オーディションを受けるのか、受けないのか。
選択するのは、その2択だけだ。

電話の向こうで喜んでくれていた前田さんとその後何を話したかなんて頭には入ってこなかった。