「ねぇ、何でそんなに歩くこと頑張ってるの?」

敦也くんの両足に装着していた長下肢装具を外すのを手伝いながら、いつものたわいもない話の流れで尋ねた。

「歩いて、いつか段差とか階段とかも昇れるようになって、屋上まで葵ちゃんの歌、聞きに行きたいって思ったんだ」


敦也くんの笑顔は屈託のないひまわりのようにも見える。

敦也くんの言葉は、私の胸を高鳴らせるには十分すぎる程のもの。

だけど……


「……外に、出たいからじゃないんだ」

言葉を吐き出してしまった後、後悔が心の奥からドッと押し寄せてくる。

『外の世界に飛び出すことが怖い』

そう言っていた敦也くんの歩くことに対するモチベーションの核が外の世界ではなかったことがやるせなくて堪らなかっただけだった。