「なぁんて。年下の生意気な患者が偉そうなこと言ってごめん」

きっと私の様子を察した敦也くんが、急に冗談交じりに舌をチロリと出しながら肩を竦めてぎこちなく笑う。


「俺だって、外の世界に飛び出すの怖いんだ。それに最近は自分が病院を退院した後のこと、よく考えるようになった」

「例えば?」

そうだな、と次の言葉を考える様に少し黙り込んでしまった敦也くんが重たい口を開く。

「例えば、葵ちゃんが前に俺のリハビリの目標を教えてくれたじゃん?それが出来るようになったとして、家に帰ったとして俺はどんな生活するのかなって。やりたいことだってない。目標だって見失ってしまったから1年後や5年後、将来何が出来るんだろうって」


敦也くんにとっては、それはとてつもなく重たい悩みの種の1つなんだろう。

だけど、それをごまかすように無理矢理に口角を上げて笑いながらその苦悩を言葉にしたんだ。