徒歩5分の距離にある社員寮に帰ると、ポストに郵便物が届いていた。
『星原 葵様』
手書きで書かれた大きな茶封筒。
宛先は、先々週受けたオーディションを主催している大手のレコード事務所。
私は部屋に戻るなり、急いで中身を確認する。
『二次オーディション 合格』
真っ白な紙に大きく書かれたその二文字に心が飛び跳ねる。
全国規模で行われている今回のオーディションには、毎年エントリーしているけれどいつも二次オーディションで不合格だったから、テンションが一気に上がる。
私は、スケジュール帳にしっかりとそのオーディションの日を書き込んだ。

