「俺がもし。もしもだけどさ」

そこまで言って、一瞬考え込む仕草を見せる敦也くん。
私は彼の言葉を待つことにした。


「もし両腕がスーパーノーマルになったとして、どんな方法でも構わないから歩くってことは出来るのかな?」


歩く……。

『あの、やっぱり敦也は……息子は、歩けないんですよね?』

入院の日、敦也くんのお母さんが主治医の先生に投げかけた言葉をふいに思い出す。

「歩きたいの?」

「歩けたら、何かが変わるもしれないと思っただけ。無理だって言われること覚悟してるから、大丈夫」

そんな物悲し気な顔で笑わないでよ。

答えに詰まる私に、敦也くんが下唇を噛みしめる様に微笑んだ。