翼の折れた鳥たちは

「プッシュアップの練習してるの?」

「そう。昨日、自主練してたら南田先生が教えてくれた。出来るようになってから葵ちゃんを驚かそうって南田先生と話してたんだけどな。作戦2日目にして、バレるっていう」


部長、そんなこと敦也くんと話してたんだ。

苦笑いを浮かべた敦也くんを横目に嬉しいような、ううん、それ以上に理学療法士としてのスキルのなさを思い知らされた気がして悔しさが募る。

「プッシュアップ出来たら、車いすの乗り移りもかなり上達するんだって」

うん、知ってる。

そう思いながら、私は小さく頷く。

プッシュアップは、両足を伸ばして座った状態で腕の力だけを使って体を浮かす。

かなり強靭な腕の筋力がなければ難しくて、敦也くんの精神状態や能力を考えながら、いつごろから練習すればいいのかと思案していた。

それなのに、部長はいとも簡単に敦也くんの意欲を引き出して、この二日間で自主トレにまで反化して、私が見たこともない程に敦也くんだって真剣に取り組んでいる。

凄いな、部長。

私にはその一言しか出てこなかった。