「星原さん、頭を上げてください」

「シゲ、お前は焦りすぎだ」

重光先生と部長の声が重なる。

ゆっくりと頭を上げると、2人とも照れ臭そうに笑っている。


「すみません。私も初めて受け持った学生なので、つい熱くなってしまっています」

理学療法士の大先輩に頭を下げられて、恐縮した私に隣で部長が小さく吹き出す。

「もし、榎田が外の世界に出たいと思う日が来たら教えてください。その時は全力でサポートします。もちろん、私だけではなくて榎田の親友もみんなそのつもりで待ち構えていますから」

敦也くん、みんなから愛されてるんだな。

重光先生の言葉が、力強く事務所に響いたのだった。