翼の折れた鳥たちは

屋上から見る山並みには、真っ赤に染まっている。

都会の喧騒とは違う時間の流れが、ここにはあって私はこの病院の屋上が大好きだ。

透き通った空気が体全体に入り込んできて、ここではいつもうまく歌える気がするから。

業務が終わると、帰る前にここに来て歌を歌う。

それが私の日課になっている。


今日は、子供の頃に流行っていたスローバラードを歌う。

「♪こんな思いじゃ 居場所なんてどこにもない」

今の気持ちをそのまま歌詞にしたような曲。


誰も聞いてなんかない、誰に聞かせるわけでもなく、好きな歌を好きなように歌える場所。


夕焼けが次第に、闇の世界に堕ちていくのを眺めながら、私は想いを歌に乗せて吐き出したのだった。