「もう理学療法士は目指せないけど、まずは今出来ること頑張るから」

敦也くんはそう言って、ガッツポーズを見せてくれる。

その表情に迷いなんてなかった。

「とにかく、日常生活を送れるようになることだよね」

「そうだね」

私が大きく頷きながら返事をすると、敦也くんは満面の笑みを見せる。


「俺、明日から空いてる時間にリハビリ室で自主訓練してもいいかな?」

「えっ?」
「もちろん」

驚きの声をあげた私と、後方からの柔らかくて優しい声が重なる。

急いで振り返ると、いつからそこに居たのか分からないけれど部長が立って穏やかに微笑んでいる。

「やる気があるなら、大歓迎」

部長が敦也くんにそう伝えると、敦也くんは整った顔を崩して嬉しそうに笑った。