「葵ちゃん、昨日屋上で歌っていた曲って誰のカバー?」
マット上で筋トレを始めようとした敦也くんが尋ねる。
やっぱり聞いてたんだ、昨日も。
「あれは……」
口ごもってしまった私を敦也くんは不思議そうな表情を浮かべて首を傾げる。
「あれは、私が作った曲なの……」
あぁ、言ってしまった。
恥ずかしくなって、視線を反らして呟くように伝える。
オーディション落ちてばかりということもあって、誰かに自分が作った曲の評価を受けるのが怖い。
「やっぱりすごいな!!葵ちゃん」
鼻で笑われるんじゃないかと思っていたのに、敦也くんの反応は正反対。
むしろ瞳を輝かせて私に尊敬のまなざしを向けてくれている。

