「葵ちゃん、おはよ」

私は敦也くんと今日どんな顔してリハビリすればいいのかだとか、どんな話をすればいいのかだとか悩んだというのに。

しかも、その悩みのせいで睡眠不足だというのに。

私を悩ませた張本人は、あっけらかんとした明るい表情で一人でエレベーターを降りてリハ室に現れた。


「おはよう、敦也くん」

きっと私は戸惑いの表情を隠しきれていないのに、気づいていないのか、それとも知らない振りでもしてくれている様子で敦也くんは鼻歌を歌いながら私の前を通り過ぎる。


えっ?!

その瞬間、息を呑んだ。

だってその歌は、私が昨日屋上で初めて歌ったばかりの曲だったから。