電車の音、学生たちの笑い声、鳴り響く着信音。


毎日うんざりするぐらい騒がしくなる大通り。


そんな通りを抜けた先にある静かな商店街。


真っ赤なポストが店先に置いてある古いお店。


その店のアンティークな焦げ茶の扉を開けるとフワッと広がる珈琲の香り。


そんな店を経営する落ち着いた雰囲気の白いシャツが似合うマスターが・・・


「なんだよそんなに見つめて」


そんなマスターなんて人はいなく


グレーのパーカーに赤いエプロン、あせた色のデニムズボンを身につける黒髪のマッシュヘアの若い男。


ビシッとした感じもなく適当な雰囲気の店長。


店のカウンターには５つ席が並び右端から２番目が私のいつもの場所


「閑古鳥が鳴いてるな～と思って」


「うるせぇよ。まだ開店前だ」


このお店の名前は【名無しのお店】。


空白の看板と赤いポストが目印だ。