そして、散々彷徨った挙句に雪に倒れ込んだ時に、 それまで憎らしかった雪が、信じられないほど柔らかく感じた。 ……安らかな眠りを誘う、羽根布団のように。 眠い。 それしか考えられなかった。 本当なら、死ぬ時というのは絶対に走馬灯とかいうものが見えて、 自分のそれまでの思い出が、次々と蘇ってくるのだという。 しかし、特にそれらしいことは起こらなかった。 ……もう、これでいいや。