「――彼は、合格なんですよ」
 
青年は、ふふんと笑った。


「これで、銀司君の中で、あなた方『テミス』への憎しみが育ち切りました。

両親を殺され、恋人を殺された彼は、肉体の限界をも超えて、望ましい暴走をした。

……だからです」


「玉野、喜咲は、お前らが……殺した、んだろう、が……!」


「ええ、いかにも。

でも、彼は……そうは思っていないでしょうね」


 
青年は、いとおしむように銀司を見つめた。

その目はどこまでも細く、開いていないようにも見えた。




「それでは、さようなら」





 
煙幕が晴れると、誰もいなくなっていた。
 



鬼山は、やっと駆け付けた構成員達に肩を貸されながら、今日の自分を不甲斐ないと思った。
 

「ちく、しょう………! 

今日も……金棒持ってくりゃ、よかった……」