姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③




気軽さを装って、わざと簡単な質問をしてみた。
 
しかし、答えはすぐに返って来ない。
 

良く見ると、孝はボロボロに疲れきっている様子だった。

どんよりと大人しく、突っ立ったまま微動だにしない。

真横で起こっている非現実的な光景にも、まるで無反応だった。

しかも、目の焦点が合っていなかった。


……やばい、この子。



やがて、孝は口を開いた。


「……違うような、『そうです』って言いたいような……」
 
混乱しているのだろうか。

聞き取りづらい声だった。


「何わけの分からんことを言ってるんだ」
 

それからほんの少し、鬼山は孝と会話をした。
 

心ここにあらずといった様子だったが、孝はどうやら本当に『こちら側』の人間のようだった。

新しいテミスの情報はまだ入っていなかったので、きっと本当に入ったのは最近のことだったのだろう。