姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③

 


孝は、頭上をひゅんっと過った熱風に気付き、

「え……」と、喜咲を見上げた。


「ちっ……!」

「うわあーっ! もういる!」

「……もういる、じゃないよ坊主……」

 
喜咲は肩で息をしながら、孝を睨み付けていた。


「……殺す……!」
 

孝は丸腰で。
 
雪絵はベンチで朦朧としている。
 
もう今度こそ助からない。
 
孝は一瞬、絶望を顔に浮かべた。

その様子を見た喜咲は、にやりと笑う。

しかし喜咲は、血の上り切った頭で、大切な事を忘れていた。

「――死ね!」


………かちり………。


喜咲が叫ぶように言った直後に、孝は血まみれになった。








「………え………?」


 
『死ね』と言われたのに、覚悟を決めたタイミングに、

とどめの一撃はなかった。