「うわ……すげー、もうこんな場所まで来てたんだ……」
孝は、ベンチに雪絵を寝かせた。
だが、まだ彼女の呼吸は浅く早く、肌もじっとりと赤いままだ。
体温は、普通の人間の平熱よりかなり低く感じたが、
雪妖の体温としては、とても高くなってしまっているのかもしれない。
孝は、何か武器になるものを探した。
しかし、こんな場所に都合よく拳銃など落ちている訳が無い。
(せめて角材でもないかな……石でもいいんだけど)
残念なことに、何も落ちていなかった。
「くっそー、……どこもかしこも、清掃が行き届いてやがる」
さすがにもう、水鉄砲は使えないだろう。
その時、キックボードを捨てた喜咲が、孝の真後ろに迫っていた。
喜咲は、炎に包まれた手を振り被る。
だが、
「うおっ……」
偶然にも、孝の膝ががくりと崩れた。
彼女の手は、孝の首があった宙を虚しく薙ぐ。



