姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③




「うわ……すげー、もうこんな場所まで来てたんだ……」
 
孝は、ベンチに雪絵を寝かせた。

だが、まだ彼女の呼吸は浅く早く、肌もじっとりと赤いままだ。

体温は、普通の人間の平熱よりかなり低く感じたが、

雪妖の体温としては、とても高くなってしまっているのかもしれない。
 

孝は、何か武器になるものを探した。
 
しかし、こんな場所に都合よく拳銃など落ちている訳が無い。


(せめて角材でもないかな……石でもいいんだけど)

 
残念なことに、何も落ちていなかった。

「くっそー、……どこもかしこも、清掃が行き届いてやがる」
 
さすがにもう、水鉄砲は使えないだろう。


 
その時、キックボードを捨てた喜咲が、孝の真後ろに迫っていた。
 
喜咲は、炎に包まれた手を振り被る。
 
だが、

「うおっ……」
 

偶然にも、孝の膝ががくりと崩れた。


彼女の手は、孝の首があった宙を虚しく薙ぐ。