「……ねえ、地面に下ろして。
いい加減、危ないわ。
屋根って言っても、あちこち劣化してて、歩くと割れそうなのよ」
「ダーメ。
君みたいのは、隙を突いてすぐ逃げるんだ。
しかも、やたら遠くに」
「ケチ。
……ところで今の時間は、なに待ちなの?」
小夜子の質問に、銀司は、はたと気が付いた。
自分はなんて馬鹿なんだろう。
……何も、律儀に吸血鬼など待たなくていいのだ。
さっさと小夜子を襲うなり噛み付くなり喰うなり、好きにすればよかったのだ。
「……君、墓穴掘ったな」
銀司は意地の悪い笑みを浮かべた。
本当に、悪い悪い顔だった。
「え?」
銀司は、油断した小夜子の手を引き、無理矢理に覆いかぶさった。
乙女のピンチである。



