しかし、


「ぼうっとしてないで、さっさと立つです!」

「………あぇ?」
 
突然、奇妙な敬語を喋るグレーの髪の女性に、腕を引っ張られ、正気に戻った。

「死ね、偽善者ども!」
 

すぐに喜咲が次の炎を放つが、女性が手をかざすと、

空中に氷の塊がいくつも現れ、炎と相殺した。

「あ、あんた誰……」
 
孝がびくびくしながら尋ねると、女性は走りながら「はじめましてです」と言った。


「……私は、テミスに所属する『雪妖』の一人、山城雪絵。

君のお兄さん……乙矢さんの恋人ですよ」


「へえ………って、ええ! 

おっちゃん、彼女いたの?」


「いるですよ、ここに」
 

雪絵は、にっこりと笑って自分を指差した。