しかし銀司が再び狼に戻りかけたのを見た乙矢は、はっとした。

「エリアル、そいつのお喋りは時間稼ぎだ!」

「当たり!」

頬の血を目暗ましに散らした銀司は、エリアルの腹部に飛び蹴りをした。

エリアルが吹き飛び、壁にめり込んだ。

「――エリアル!」
 

小夜子が喉が裂けそうな悲鳴を上げた。

衝撃で舞い上がった埃か煙か、とにかく視界が悪くて何も見えなかった。

 
乙矢が大声で言った。


「小夜っち! 今そっち行くから動かないで! 

でもやばいと思ったら逃げて……!」
 

乙矢は直感していたのだ。
 
しかし、遅かった。
 
小夜子は、すぐに自分の近くに気配を感じた。
 
地面にへたり込んだまま、動けなかった。
 
目の前にいたのは、狼男だった。





「……一緒に来てよ」