姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③




「いやいや嘘じゃないって、これだけは。

だって証拠に、俺の牙も爪も血が付いてないでしょ? まだ食事してないんだよね~……」

 
おぞましい事を、あっけらかんと言う狼に、小夜子は寒気がしたが、青子の無事が確認出来ただけでもほっとした。

何せ本人が本当に困っている様子なのだ。

ふさふさの黒銀色の尻尾も、落ち着かないように揺れている。


(そういえば、青子さん……物凄く方向音痴だったっけ。

前にサークルのメンバーで中華街に行った時も、青子さんが街並みに気を取られ過ぎて余所見して、

いつの間にか先輩達の後ろから大分離れちゃって、私達揃って迷子になったんだ……)
 
あの時、同じく方向音痴の小夜子はかなり迷惑をしたが、これまでの人生で、こんなにも誰かの方向音痴に感謝した事はなかった。

 

多分青子は今、反対側の北口をうろついている……。
 

そのくらいの間違いを、素でやってしまうくらい大雑把なのだ。

それが青子だ。


「さて、困った困った」