しかし、――慎重に着地しようと思っていたのに。
エリアルは、突如壁を突き破って掴みかかってきた狼男を避けるのにバランスを崩した。
その時驚いて、つかまる力を緩めてしまった乙矢が、3メートルくらいの高さから地面に落下した。
受身も取れずに、したたかに背中を打ち付ける。
アスファルトの硬い感触が、直に脳に響いた。
「あぐっ……!」
「お兄ちゃん!」
小夜子が、叫んだ。
少し離れた場所に着地した狼男が、彼女を眺めながら舌を出した。
「はは、知ってる匂いだと思ったら、小夜子ちゃんか……」
エリアルは、乙矢を庇うように彼の近くに着地し、狼男を牽制するように睨みつけた。
小夜子は、上半身が獣の男――月代銀司の姿を見て、顔をしかめた。
「先輩、あなたまさか青子さんを……!」
「青子? ああ、あの子ね。
変だよなぁ……道にでも迷ったのかさっきから待っても全然来ないんだよね。
メールでは『今向ってます』ってきてたけど、とっくに約束の時間過ぎてるから、こっちも参ってたんだ」
「嘘吐かないで! まさか、もう……」



