君を知らないわたしと、わたしを知っている君。




『…だって、俺のこと好きでしょ?』


頬を染めて、目を見開いた凛兎の顔を俺は一生忘れない。
凛兎は嘘をつけないし素直なやつだから、
俺のことを馬鹿だなんて言いながら、その表情は肯定したも同然で、
俺は凛兎の手を引いて初めてのキスをした。

それからは天国のように幸せだった。
毎日凛兎の笑顔を見て、毎日一緒に過ごして。

この幸せがきっと永遠に続くんだと子供ながらに信じていた。

…凛兎の父さんが死ぬまでは。



『なんで⁈冗談でしょ⁈冗談って言ってよ‼︎』



…自殺だったんだ。
学校からの帰り道。綺麗な夕日が見える歩道橋の上だった。
奏美さんが焦るように走ってきて、凛兎に父親の死を告げた。
凛兎の幼い叫び声が俺の頭に鮮明に響く。


『お父さんは、凛兎のこと嫌いだったの⁈なんで⁈なんで置いていったの⁈』
『凛兎、落ち着いて…っ』

『離してよ‼︎‼︎凛兎もお父さんのところに行くから‼︎‼︎‼︎』

『凛兎…っ‼︎‼︎』