俺も知っている。
凛兎は本当にお父さん子だった。
今の凛兎は、それを覚えていないけど。
彼が亡くなって、自分の記憶を封じ込めてしまうほどショックを受けたんだ。
本当に父親が大好きだったんだろう。
真実を伝えたら、凛兎はもっとショックを受けるだろうか。


「…もう、いいんじゃないかって思ってる。」
「…でも、」
「凛音くんだって、過去のこと思い出してもらいたいでしょ?」
「…それは、」


それは、自分勝手な願いだと思っていた。
何も言えずに黙り込むと、奏美さんは少し微笑んだ。


「今の凛兎なら、受け入れられると思うの。」


慈しむような眼差しで、封筒を見つめる奏美さん。
母親の奏美さんが言うのなら、大丈夫なのかもしれない。

俺は一人台所を後にして自分の部屋に戻る。
ベッドに横になり、ゆっくりと目を閉じた。