「…あれ、起きてたんだ。」


愛姫と別れてから家に戻ると、ちょうど起きてきたらしい奏美さんが
台所のテーブルで、困ったような表情をして座っていた。
向かい側に座って、奏美さんの顔を覗き込んでみる。


「…どうしたの?」


奏美さんがゆっくり顔を上げる。


「凛音くん、…もういいのかな?」
「ん?」
「もう話していいのかな。」
「…待って。まったく話が見えないんだけど。」


困惑する俺に、奏美さんは手に持っていた封筒を俺に見せた。


「…見つけちゃって。」


受けとってみると、宛名は凛兎。差出人は、凛兎の父親。


「これは…?」
「遺言、って言うのかな…あの人、凛兎のこと本当に大好きだったから。
凛兎には自分のこと、覚えていてほしかったのかもね…」