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大学生の夏休みは異常に長い。
別にすることが無いわけでは決して無いし、
遊んでいていいわけでも無い。
ただ、手をつけるまでに時間がかかるだけだ。
俺は見た目ではわからないけど、かなり要領が悪い。
そして、かなり不器用…かもしれない。
凛兎たちと旅行に行ったあとから、俺は少し戸惑っていた。
凛兎と過ごしたホテルの部屋。
…あいつ、眠りに落ちる前に確かに俺の名前を呼んだ。
でも次の日には何も覚えていなかった。
少しずつ何かを思い出しているんだろうか?
やっとやる気になった勉強を始めてから数分後、
俺の頭はそのことでいっぱいで、勿論手は止まっていた。
「わっかんねーな…」
花火を見に行ったとき、本当のことを話そうと思っていた。
だけど花火の音に俺の声がかき消されたとき、
もしかしたらまだその時では無いのかもしれないと思ってやめた。
…過去を思い出したら、凛兎はどういう気持ちになるんだろう。
凛兎を傷つけることだけは、したくない。
