君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「…ごめん、花火で聞こえなかった。なに?」

「…何でもない。花火、綺麗だな。」



お兄ちゃんが微笑って、わたしの手を握った。
わたしは頷いて空を見上げる。
お兄ちゃんの過去を聞いて、何故か不思議な気持ちになる。
泣きたいような、懐かしいような、複雑な気持ち。
お兄ちゃんはまだその人のことが忘れられないのだろうか。
何度も打ち上がる花火。綺麗。久し振りに見た。




『花火、見れてよかったな。』




ふと、男の子の声が聞こえて振り返る。
勿論そこには、誰もいない。
…まただ。いつもお兄ちゃんのことを考えているとこの声が聞こえる。
懐かしい声。誰かわからない男の子の声。


「…凛兎?」


名前を呼ばれてお兄ちゃんの顔を見上げる。


「来てよかったな。」
「、うん。」


お兄ちゃんの指が頰に触れる。
満天の花火の下、どちらともなく唇が重なった。

この幸せがずっと続けばいい。
そう、小さく願った。