君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「何食べたい?」
「…焼き鳥。」
「おっさんかよ。女子って普通チョコバナナとか好きなんじゃないの?」
「…甘いもの嫌いだから。」
「そうだった。忘れてた。お前昔からそうだよな。」
「昔…?」


わたしの顔を見て、少し焦るお兄ちゃん。


「奏美さんから聞いたの!」


そっか、と呟く。前にもこんなことがあったような。
…何か隠しているようにも見えるけど、なぜか聞けない。
…聞くのが怖くて。
だいぶ暗くなってきて、花火の時間が近づいてきた。



「向こうの芝生で見ようか。」


早めに場所取りに向かい、芝生にシートを敷いた。
買ってもらった焼き鳥やらたこ焼きやら、
あまり女の子らしくない食べ物を並べる。
慣れない足袋を脱いで足を休めていると、
お兄ちゃんが隣に座った。


「…お母さんがね、お兄ちゃんのことよろしくって言ったの。」
「奏美さんが?」
「うん、意味わからなかったけど。お世話になってるのはわたしなのにね。」

「…ほんとだよ。」



お兄ちゃんが笑う。
わたしはたこ焼きを一つ摘んだ。
…美味しい。