次の日の夕方。
夏は日が長いから、まだ外はだいぶ明るい。
仕事に行く前のお母さんが浴衣の着付けを申し出た。
鏡の前に立って、紺色の浴衣を着せてもらう。
「…なんだか知らないうちに、凛兎も大きくなったのねえ。」
帯を結びながら、お母さんがそんなことを言い出す。
「…何、突然。」
「…凛兎、何かお母さんに話したいことない?」
優しい声でそう言うお母さん。
こんな風にちゃんと話したの、久し振り。
わたしは考える。
最近いつも悩みがあったらお兄ちゃんに伝えていたから
お母さんと少し距離があったのかもしれない。
「…じゃあもし、好きになっちゃいけない人を好きになったら…お母さんならどうする?」
自分で言った言葉に、驚く。
…きっと今、お兄ちゃんのこと考えてたから。
「…そうだなあ…自分が後悔しない道を選ぶかな。」
「後悔しない道…」
「お母さん、凛兎には絶対に幸せになってもらいたいなあ…」
鏡越しにお母さんと目が合う。
お母さんがわたしの肩に優しく手を置いた。
