「…人混みは苦手なんだけど。」
「俺がずっと手ぇ繋いでてやるよ。」
「よくそういうことを恥ずかしげもなく言えるよね。」


本人は別に恥ずかしくもなんともない様子。
何が?って感じ。…ああ、そうか。慣れてるのか。


「芽依も誘う?」
「いや、二人で行こうよ。」
「…なんで?」


首を傾げるとお兄ちゃんはばーか、とわたしの頭を小突いた。


「花火大会は特別だろ。」


立ち上がって台所に戻って行くお兄ちゃん。
花火大会は特別?
…なんの言い伝え?


「あと絶対に浴衣な。浴衣。」


付け加えるようにお兄ちゃんがそう言った。