君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



わたしは今日あったことをゆっくりと話し出す。
途中で翔太くんの表情や声を思い出して何度も泣きそうになる。
その度にお兄ちゃんはわたしの頭を撫でてくれた。
全部話し終わると、お兄ちゃんが大きな溜息をついた。


「…まあ、あいつが女嫌いなのは知ってたんだけどな。」
「じゃああの出会いの話って、」
「…ごめん嘘ついて。翔太こそ喧嘩強えから。喧嘩してて仲良くなったようなもんだよ。」


…そうだったのか。
翔太くんは警戒に警戒を重ねていたんだ。
わたしがちっとも気づいていなかっただけで。
芽依が家に寄ったときに、お兄ちゃんが翔太くんはやめた方がいいと
忠告してくれた訳がようやくわかってきた。
裏の翔太くん。女嫌いの翔太くん。


「俺は俺であいつのこと守ってたつもりだったんだけど…」
「…なんか、ごめんね。余計なことして。」
「凛兎のせいじゃないよ。俺がちょっと調子に乗りすぎただけ。」
「でもなんで翔太くん、わたしと旅行行くことに賛成したの…?」
「俺がついてくる事わかりきってたんだろ。芽依ちゃんだけ予想外だったんだろうな。」


みんなで旅行行ったら楽しそうだと思ったんだよなあ…、と呟くお兄ちゃん。
でも実際、翔太くんもすごく楽しんでいるように見えた。
まあ普段から彼は無邪気に笑っているイメージがあったけど。
ホストの仕事してる人って、演技力まで鍛えられるんだろうか。