君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



嘲笑うような翔太くんの声。
お兄ちゃんが、翔太くんの家族は複雑だって言っていたのを思い出す。


「…胸糞わりぃ、ぶち壊してやりたい。」


耳元で聞こえた恨みのこもったような声に、体が震えた。

両腕を壁に押し付けられ、無理矢理にキスされる。
何度も何度も。強く押さえられて、抵抗できない。
心が痛い。胸が苦しい。涙が溢れる。何の痛みなのか、わからない。
呼吸が苦しくなって、何も考えられなくなる。

ようやく唇が離れて荒い息を整えると、翔太くんはわたしを突き放した。



「俺はな、女ってのを信じてねーの。
凛音はいつも喧嘩ばっかしてて、女に興味がなかったから選んだんだ。
愛姫と付き合い始めた時だって、俺に害はなかったからな。」


なのに、と翔太くんがわたしを睨みつける。


「お前さあ、
俺に興味持たねーように、せっかく凛音とくっつけたのにさあ。
芽依とか言ういらねー女連れてきやがって。
はじめっから知ってんだよ、あいつが俺に興味あることなんて。」


ポケットに手を入れながら翔太くんは溜息をついた。
…そうか、だからか。
今日一日の翔太くんのおかしな態度に納得がいく。
芽依となるべく関わらないようにするためだったんだ。