君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「凛兎!芽依ちゃん!こっちこっち!」


お兄ちゃんの呼ぶ声が聞こえて、芽依に腕を引かれる。



『凛兎!おせーよ!こっちこっち!』



…あれ。…なんだろう。
お兄ちゃんの声が懐かしい声と重なって、思わず立ち止まる。
…誰の声だろう。


「…凛兎?どうしたの?」
「んーん。大丈夫。行こう。」


心配そうな芽依の声に、首を横に振って再び歩き出した。
…考えようとすると、何故かいつも怖くなる。
思い出してはいけないような気がするけど、
でも、何か、すごく大切なことを忘れているような気もする。
よくわからない。


「芽依ちゃんはなんでも似合うなー、モデルになったら?」
「やだあ、やめてくださいよ翔太さん!」
「なーんで。絶対売れると思うけどなー。」


仲よさそうに話す二人を見て、安心する。
お兄ちゃんを見上げると、彼は遠くを見つめて何かを考えているよう。


「…お兄ちゃん?」
「…ん?あ、ごめんごめん。凛兎はパーカー脱がないの?濡れるよ。」
「うーん…」